キイトルーダが非常によく効く
目次
キイトルーダの治療成績の新たなデータが報告された
The New England journal of Medicineに2020年12月3日にかねてから注目されていた臨床試験のKEYNOTE-177の結果がpublishされたので解説します。
大腸癌の新たな治療
免疫チェックポイント阻害剤が昨今注目されていました。2018年に本庶佑博士がこの研究でノーベル賞を取られてから、一気に認知されることとなり、胃癌、大腸癌や皮膚癌、尿路系癌など、色々な固形腫瘍で有効性が示されました。
Pembrolizumab in Microsatellite-Instability-High Advanced Colorectal Cancer
N Engl J Med 2020; 383:2207-2218
DOI: 10.1056/NEJMoa2017699
- 青線:キイトルーダ(pembrolizumab) 新薬
- 赤線:従来の標準治療 無増悪生存曲線です。
Abstract
【Backgraound】
MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)もしくはdMMR(DNAミスマッチ修復機能欠損)の切除不能大腸癌既治療例に対する抗PD-1抗体薬療法は,臨床的有用性は示されている。MSI-H,dMMRの進行、切除不能大腸癌の一次治療での抗PD-1抗体薬療法と化学療法の比較は不明である。
【Methods】
- Phase3の非盲検化試験
- 転移のあるMSI-H ,dMMR大腸癌で未治療の307例を1:1に割付
- 3週毎200mg pembrolizumab 35サイクルまでvs 2週毎5-FU base±Bmab or Cmab
- 化学療法群がPD (progressive disease)になった時はpembrolizumabに移行
- 主要評価項目はPFS (progression-free survival), OS (overall survival)
【Results】
- 第2回の中間解析時、追跡期間中央値32.4ヵ月において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較しPFSが有意に延長していた(中央値16.5ヵ月vs.8.2ヵ月、ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.45~0.80、p=0.0002)
- 追跡期間24ヵ月後の推定restricted mean survivalは、ペムブロリズマブ群13.7ヵ月vs.化学療法群10.8ヵ月であった。
- データカットオフ日の時点で、pembrolizumab群56例、化学療法群69例が死亡した。これは必要イベント数の66%で、OSについての評価は現在も進行中であり、最終解析まで盲検化されたままである。
- 奏効率は、pembrolizumab群43.8%、化学療法群33.1%であった。奏効が得られた患者における24ヵ月後の奏効持続率は、化学療法群の35%に対し、ペムブロリズマブ群は83%であった。
- Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、pembrolizumab群22%、化学療法群66%(死亡1例を含む)であった。
【Conclusions】
PembrolizumabはMSI-H, dMMR転移性大腸癌の一次治療において化学療法群よりも有意にPFSを延長し、有害事象が少なかった。
【Discussion】
- PembrolizumabはMSI-H, dMMR転移性大腸癌の一次治療において化学療法群よりも有意にPFSを延長し、有害事象が少なかった。
- PDのbiomarkerはまだ結論が出ていない
- 本研究ではサンプルサイズが小さいため限定的な解釈になるが、RASの変異例では抗PD-1抗体はPFSを延長しなかった。
- 分子標的薬CTLA-4標的治療薬(ipilimumab)併用の臨床試験が進行中(Checkmate 142試験)。
- 本研究では1/3が左側結腸、直腸であり、MSI-H, dMMR大腸癌は左側の腫瘍にも注目する必要がある。。
- MSI-H–dMMR大腸癌の多くが遺伝性であるが、生殖細胞系列検査の同意が得られず、PD-1抗体のsporadicと遺伝性の比較検討ができなかった。 ただし、MSI-H–dMMR腫瘍のBRAF変異は散発性疾患の代理と見なすことができる。BRAFV600E変異の患者と野生型MSI-H–dMMR腫瘍の患者はPD-1抗体が有用であった。
- OS (overall survival)は全死亡が190例、もしくは最終のデータのreviewから12ヶ月経過してからの評価となる。
- 結果としてpembrolizumabは転移性のMSI-H–dMMR大腸癌の初期治療として考慮されるべきである