どんなに抜けなくても、糸を使えば必ず指輪は外せます。
結婚指輪など、外すことなくずっと付けっぱなしの方も多くいると思います。
その指輪、外れますか?
手術を受ける時、指輪を始め、アクセサリーは全部外す必要があります。
◆理由①:電気メスで火傷の危険!
多くの手術では、電気メスを使用することがあります。
電気メスとは、その名の通り”電気のメス”で、電気の熱で体の組織を切ったり焼いたりする道具で、普通のメスの様に使えて、止血能の優れたナイフの様なイメージです。
大きな手術にはほぼ必須の道具です。
電気メスの仕組み
電気メス使用時は、体内に電気が流れますが、電気を体外に逃がすために、体に”アース(対極板)”を貼り、体内に電気が溜まらないようにします。
しかし、体に金属の指輪が接触していてこれが少し浮いた場合、この隙間に電流が発生して火花が起こり、やけどを起こす可能性があります。
ですので、手術の前にはなんとしても指輪は外さないと手術は受けられません。
◆理由②:手術中や術後はむくむ!
手術を受ける場合、大半の症例が点滴を入れながら手術を行います。点滴を入れる目的は単なる脱水予防だけでなく、容態が急変した時に迅速に薬を静脈注射できるための経路として使用したり、入れる点滴の種類によって体内の電解質バランスを調節したり、出血が多い場合の輸血の経路として必要なのです。
手術を受ける場合、点滴でさまざま薬を投与しながら手術を行います。
点滴を入れる目的は血圧維持や麻酔の維持、脱水予防などです。
しかも、個々の患者さんによって、投与する薬剤の種類によって体内の電解質バランスを調節したり、出血が多い場合の輸血の経路として必要なのです。
手術の部位や内容により程度は異なりますが、術中は血液・浸出液(血管から染み出した水分のような物)・リンパ液・不感蒸泄(汗など目に見えず蒸発する体液)・尿など、多くの体液が体外に排出されます。この体液の排出が続いてしまうと脱水の状態になってしまい、様々な悪影響を及ぼします。これを予防するために、術中は体液の排出以上に輸液(点滴・輸血)を行います。併せて、術中は患者自ら体を動かすことがでず、静脈の流れが滞りやすい状態にあります。
これらの原因により、術中の患者さんはとても体がむくみやすい状態にあります。手の指にも同じことが言え、普段ジャストサイズの指輪でも、むくむときつくなり、指を締め付けて血流障害を起こす恐れがあります。ひどい場合には血が止まって紫色になったり、この状態が長時間続くと、最悪の場合指が壊死してしまうことだって起こり得るのです。
また、敗血性ショックの手術の後や、心臓血管外科の開心術の術後は良好な術後経過をであっても、術後数日は全身がむくむことがほとんどです。
よって指輪などのアクセサリーは手術の前に必ず外す必要があります。
◆外れなかったら?
大丈夫です。
糸を使えば外れます。
指輪を外す方法はいくつか言われています。
- オイルや石鹸を使って滑りやすくして取る
- 指をマッサージをしてむくみを取ってから取る
- 指にたこ糸などを巻きつけて細くして取る
- 指輪カッターで指輪を切る
基本的には③で取れないケースはないと言っても過言ではないです。
①や②はやりすぎると、指輪が指を通過する際に指の皮が傷つきます。
③糸を使えば取れます。
④指輪カッターの刃先が指と指輪の間を通るぐらいのスペースがあるなら③糸の方法で楽勝です。
早まって、大事な指輪を安易に切断しないようにしましょう。