大腸がんの抗がん剤治療
現在、抗癌剤治療は10年前と比べてもよく効く薬が開発され、種類も豊富になりました。
とにかく治療効果が改善し、長期生存例が多くなりました。
数年前なら助けられなかった人でも、抗がん剤のおかげで助けられることもそれほど珍しくないと言っても過言ではありません。
そんな治療の中でもオキサリプラチンの役割は大きなものを占めます。
一番投与例で多いのが大腸がんでしょう。他にも消化器領域では胃がんや膵がんで投与されることが多いです。
大腸がんでオキサリプラチンと併用される薬剤
オキサリプラチンは単剤で投与されるレジメンは基本的にはありません。
フッカピリミジン系の薬剤と組み合わせて投与されます。
- 5-FU
- カペシタビンcapecitabine(ゼローダ xeloda)
- Sー1(ティーエスワン)
よく使われるゼロックス療法は抗癌剤の
フッカピリミジン系(ゼローダ)+プラチナ製剤(オキサリプラチン)を加えて、英語で
Xeloda+OxaliplatinなのでXELOX療法になります。
Capecitabine(Xeloda)+OxaliplatinなのでCAPOX(XELOX)療法になります。
CAPOXとXELOXは同じ治療法になります。
5-FU+OxaliplatinでFOLFOXとなります。
また、フッカピリジミン系にイリノテカンや分子標的治療薬の併用もあります。
フッカピリミジン+オキサリプラチン +イリノテカン(irinotecan)でFOLFOXIRIです。
有害事象 痺れ
オキサリプラチンの最も多い有害事象は末梢神経障害です。
多くの人は手先や足の裏がピリピリする、というような症状を訴えます。
どういうわけか冷たいものが指先に触れると、ピリッとして不快感が強く、時には痛みが出るようです。
手袋をうまく活用する人も多くいます。冬になると、冷たい風が当たる瞬間なんかは結構辛いようです。
足の裏の痺れが強い人もいるし、手先だけが痺れるという人もいます。
人によって症状は様々で不思議なものです。
手袋などで対策することもいいですが、ゼローダ併用の場合は手先がひび割れることも多いので手の保湿を心がけることで改善します。
保湿剤に関してはヒルドイドローションなど、病院が処方してくれます。
痺れを侮ってはいけない
痺れは最初は感じない人も結構います。
しかしながら、オキサリプラチンの投与を行うと、回数を経るごとに徐々に痺れを感じるようになり、次第に痺れの症状が強くなってきます。
最初は感じなかったものが、オキサリプラチン を投与して3日間痺れるようになります。
そして3日以後は改善します。
治療スケジュールを経るごとに3日間続いていたものが1週間ぐらい持続するようになります。
1週間経つと消えていた痺れが10日続く、という様に徐々に痺れがきつくなってきます。
それでも投与を続けると痺れがとれなくなって、1年以上の休薬期間をとっても痺れ続けるケースも多いです。
痺れの確認の方法は色々ありますが、
- 自分でボタンを止めることができるか?
- 何もしていないのにピリピリ痺れる症状が3日以上続くか?
という点は非常に重視したほうが良いと思います。
末梢神経障害のgrade分類があります。((神経症状-感覚性毒性基準 (DEB-NTC)))
G0:症状なし
G1:末梢神経症状(多くは指先の痺れ)が出現し、7日未満で消失
G2:7日以上持続する、末梢神経症状
G3:機能障害の発現
痺れによく効く薬
実は痺れによく効く薬はあまりないです。
有害事象対策にはプレガバリン(リリカ)やビタミンEを内服、漢方の内服などが教科書的には有効とされています。
しかしながら、一番良くなる方法はオキサリプラチンを休薬、中断することです。
休薬、中断と比較すると、リリカやビタミン製剤はほとんど意味がないくらいです。
それぐらい、休薬、中断の方が痺れに対する効果は大きいです。
痺れはなんとなく我慢してしまいがちになりますが、抗癌剤を休薬して、時間を置かないとなかなか改善しないです。
休薬して命に関わるのではないか?
末梢神経障害は命に関わる、というよりは生活に困るという側面が強いため患者さんとしてはがんの治療を優先でなんとか我慢する、と考える人がたくさんいるのは理解できます。しかしながら痺れがG3のgradeまできて休薬期間がかえって長くなる問題もなかなか侮れません。
stop and go strategyといって適宜休薬、再開する方法でも有効性が減らないことはある程度確立されつつあります。
医師に報告
ですので、痺れに関しては主治医の先生にこまめに報告することが重要です。
痺れがきつくなってから、「最近痺れるんです」なんて報告を受けることがありますが、痺れが1週間持続する状態になってしまうと休薬しても改善しない(不可逆)状態になってしまいます。
「聞かれなかったから言わなかった」、「たいしたことないから言わなかった」なんてことが多々あります。
聞かなかった主治医にも問題があるかもしれませんが、主治医のせいにしても痺れはよくなりません。とにかく痺れには敏感にならないと、本当に辛くなるので注意して下さい。
痺れは治療を続ければ続けるほど強くなっていくので、徐々に慣れてくるとか、そういうケースは期待できません。
とにかく、早めに報告して治療と有害事象(痺れ)のバランスを取らないといけないです。