本格的ながんゲノム医療の導入に伴い、2つのがん遺伝子パネル検査が2019年6月に保険収載された。それによってがんのオーダーメイド医療が進歩しつつあります。以下、がんゲノム医療の解説になります。
ゲノムとは?

ゲノム(染色体23本で1セット)>染色体(DNAが折りたたまれたもの)
>DNA>遺伝子
の順になります。つまりゲノム解析で一括でその人のお王の遺伝子を調べられるイメージです。遺伝子というのは、DNAの長い配列の中のほんの一部でしかありません。
がんゲノム医療とは?
遺伝子には2万あまりの種類があることが分かっています。がんが発生する主な原因は、この遺伝子の異常、つまり遺伝子に傷が入ることだとされています。
そのため、最近は、がんの遺伝子を検査して、遺伝子の傷を調べることで、特定のがんの診断や、追加治療の必要性の検討や、効果が高そうな薬物治療(抗がん剤)の選択の補助に用いることができるようになってきています。
これを、がんのゲノム医療と呼び、オーダーメイド医療の一つで、個々の患者さんのがんの性質に合わせた治療が行えるようになってきています。
がん遺伝子パネル検査
2つのがん遺伝子パネル検査が2019年6月に保険収載された。
がん遺伝子パネル検査とは次世代シークエンサーという遺伝子解析技術の発展によって、主に腫瘍細胞を用いて1回の検査で高い精度で数百に及ぶがんの遺伝子を一括で網羅的に解析する検査のことである。
保険収載されたのは
①OncoGuideTM NCCオンコパネル
②FoundationOne®️ CDxがんゲノムプロファイル
いずれも検査費用は56万円の3割負担で約20万円。
この検査によって今まで分からなかった、遺伝性腫瘍症候群(遺伝が関係あるがん)が明らかになった。
がん遺伝子パネル検査のメリット
現時点でのがん遺伝子パネル検査の主な使い方は、がんの遺伝子の特徴を調べることで、現在実施中の治験などの臨床研究を探すために用います。
がん遺伝子パネル検査の使い方として、がんの予後(どのくらいで調子が悪くなるか)を予測したり、難しい病気の診断にも用いることについても期待されていますが、現時点では、予後予測や診断のために用いる場合はほとんどありません。
あらかじめ、がんが有している遺伝子異常を調べることで、世の中に存在する治療薬の効きやすさを予想できるような遺伝子異常が見つかる場合があります。
この検査を受けられるのは指定された施設のみです。
保険診療の対象は?
- PS(performance status、全身状態の指標)良好。具体的には3ヶ月以上の予後が見込める
- 悪性固形腫瘍と診断されている
- 治癒切除不能、もしくは再発病変があり、かつ①標準治療が確立されていない②標準治療が終了した、もしくは終了が見込まれる
- 検査によって臨床試験に進める可能性もしくは適応外使用へ進める見込みがある
ゲノム検査でHitする確率
NCCオンコパネルでは6割が効果がありそうな医薬品と関連した遺伝子変異が見つかったと報告されています。また、実際に治療薬投与に至ったのは13%の患者さんに認められました。
((Feasibility and utility of a panel testing for 114 cancer-associated genes in a clinical setting: A hospital-based study; Cancer sci 2019 Apr))
がん遺伝子パネル検査のデメリット
- 費用が高い
- 検査提出までに時間と手間がかかる
- 実際に治療に結びつくのは15%程度
大腸癌では
大腸癌ではMSI関連の大腸癌があり、リンチ症候群と関連するとされる。
MSI関連の遺伝子変異のある大腸癌では、大腸癌の化学療法のメインであるフッ化ピリミジン系の抗がん剤が効きにくいことが知られており、免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ)が適応になる。
2020年12月にはキイトルーダがMSIーH大腸癌で奏功率が高かったという論文(KEYNOTE-177)が発表されています。