腹膜播種を解説
笑ってコラえての22歳の大腸癌の花嫁に関しての記事です。花嫁さんのinstagramのハッシュタグに腹膜播種と書かれています。
腹膜播種に対して説明します。
イラストは検索するともっとクオリティのものがたくさんありますが、簡略化して描くとイメージは以下の様になります。
盲腸から結腸、直腸までの便の通り道を大腸といいます。
そのどこかに癌ができた場合、大腸癌と言います。
腹膜播種の病態
腹膜播種、というのはその癌そのもの(原発巣)から癌の小さな細胞の一部が腹腔内(お腹の中)にポロポロこぼれ落ちる様なイメージです。腹膜に種を播く、と書きます。読んで字のごとくです。
腹膜播種に陥った状態では目に見えるものを全て外科的に切除したとしても、目に見えないレベルの細胞も腹腔内に残っている、と考えるのが一般的です。
腹膜播種の予後
ですので、理論的には手術で全ての目に見える範囲の癌を外科的に取り切って治癒する、というのは不可能と判断します。目に見えないレベルでの細胞が残っていると判断せざるを得ないからです。
こういった理由から、同じstageⅣでも切除することが可能なことが多い大腸癌の肝転移や肺転移よりも予後が悪くなります。
2017年以前は肝転移や肺転移と大腸癌の腹膜播種はステージは区別されていませんでしたが、大腸癌の現在の取り扱い規約では肝転移や肺転移があってもどちらか一つならstageⅣaとなります。
しかし腹膜播種があればそれだけでstageⅣcの診断になります。
腹膜播種の治療
腹膜播種を来した場合の治療のメインは抗がん剤になります。
同じ腹膜播種の中でも、胃癌や膵癌の腹膜播種と大腸癌の腹膜播種は少しだけ違う点があります。
基本的に起こっている現象は同じで、胃癌の場合は胃から胃癌細胞が腹腔内にこぼれ落ちるし、膵癌の場合も膵臓から腹腔内に膵癌細胞がこぼれ落ちる状態になります。
しかしながら、大腸癌は胃癌や膵癌と比較すると発育が遅く、抗がん剤が効きやすいという特徴があります。
腹膜播種の状態に至っている場合は、胃癌、膵癌が原発の場合は基本的には手術すること自体が生命予後を悪化させることが既に明らかになっています。
大腸がんの場合
しかしながら、大腸癌の場合は手術を行う例もそこまで珍しくはありません。
理由は、大腸癌の場合は腹膜播種であっても手術と抗がん剤を併用することによって、根治する可能性が稀にあるからです。なぜ大腸癌だけが手術で治ることがあるかと言われると、一言では言えませんが、胃癌や膵癌よりも、悪性度が低いから、という理解でおおよそ間違いではないと思います。
抗がん剤で癌自体をある程度、弱らせることができます。
その上で、目に見える範囲で腹膜播種を取り除くことで、生存期間は延長され、ごく稀に根治することがあります。
よって大腸癌の場合は腹膜播種でも手術を行うことはときどきあるのです。
目に見える範囲で可能な限り手術で癌を取り除いた後、再発しないかを定期的にCTなどでチェックしていきます。
再発がないまま1年経ち、2年経ち、としているうちに、もしかして治ったの?みたいな感じになって、さらに3年、4年と経過してそのまま再発がない例が大腸癌の場合はたまにあるのです。
胃癌の腹膜播種と比べれば、まだ可能性があります。